BI/IM早分かり

「現代日本型BI/IM」概説(2024.2)

1.「ビジネス・インキインキュベーション」 用語の由来

 起源は、アメリカのニューヨーク州バタビアという小さな街の出来事で、大きな農機具工場が時代の変化に対応できずに倒産し、その施設をJoseph Mancusoという人が買い取り、養鶏業を始めました。そして孵化器(incubator)により卵を孵化し沢山の雛を育てていたのでそこら中が鶏だったと記録されています。

 ところがあるとき、養鶏業を止め農機具工場の倒産により失業した人達の起業を促進する手伝いを始めました。それは事業(business)を孵化させることに通じるので、施設をbusiness incubatorと称したことからこの言葉が生まれました。後に彼はincubator manager(IM)と呼ばれるようになり、また建物の呼称incubatorは行為を表すincubationに替わり、これらの言葉はBI/IMとイニシアルで略称されています。

 ビジネス・インキュベータでの創職(job creation)結果が良かったことから、類似の試みが世界各地でそれぞれの事情を加味しながら広がり、約30年遅れてわが国でも試みられることとなりました。しかし、わが国では、ハイテク事業による急成長企業の意図的創出を図る施設が建設されましたが、期待どうりの結果は少なく、それまでの運営ノウハウと地域事情を考慮して「現代日本型BI/IM」に進展しました。

2.現代日本のBI/IM

 BI/IMというコンセプトがわが国に導入され、今日までにいろいろな解釈がなされましたが、現在はBIを産業創造、IMを産業創造師 と表現しております。

 それは、わが国にIMが誕生して20余年、IM達の活動結果を辿ると、単に創業支援施設の創業相談員という戦術的な立場を越え、地域の暮らし全体を考え人材連携や能力向上のため切磋琢磨の機会創出など、戦略的に制度面の改善をも考え且つ活動する人が増加している事実が目にとまりました。それらは地域の現場ニーズから必然的に生まれた結果と捉え、わが国のBI/IMを下図のように解釈するに至りました。

3.ベンチャーから地方創生へ

 わが国では、過去に何度も景気が低迷するTABI度に、国や地域政策の後押しでベンチャーブーム訪れましたが、いずれも時と共に消えて行きました。現在はベンチャーに代わりstart upsなどと呼ばれていますが、革新的な事業が急成長して存続すればそれにこしたことはありませんが、BI事業を30余年継続するうちに、株式公開を果たす企業の創出、革新的な事業による地域開発、地域住民による暮しの維持など、それぞれそのやり方の違いが判り、またそれぞれに必要な経済インフラの必要性が判ってきました。

 従って、地域を潤す経済発展が行政の財政的支援のみで短期間且つ容易に生まれることは望めず、地域毎に何が必要か、何が可能か等を熟考の後先ずはそれらを担う人材育成が必要です。

 そうこうするうちに、わが国は都市部の経済一極集中が進み、高齢化や人口減少により地域の疲弊が進み地域創生が叫ばれていますが、今正に原点から地域経済を考え対処するBI/IMが必要とされるの時代になっています。

4.IM志願者の増加

 わが国のIMを志す人は、当初は通産相(当時)によって創設された産業プラットフォームの職員でしたが、その後の政策の変化により、下図に示すようにあらゆる産業支援に関わる機関で「創業支援」が行われるようになってきました。

 従って、IMの役割は典型的なBI施設の担当者の職能から各種産業支援機関の職員にも実施可能な内容へと変化してきました。

 即ち、既に存在する企業を振興したり救済する機関の専門能力に加え、何も無かったところから新たな事業を創造する起業家を育成する新たな仕組や専門能力を獲得しなければなりません。さて、そんなことが可能でしょうか

5.IMの役割の変化と持続のためのBIシステム

IMのゴールは産業創造師であると先述しました。産業創造には広範な能力が必要ですが、これを一人の人間に期待すると、初期のIM論のようにスーパーマン依存となり画に描いた餅になります。しかし多数の異なる専門を有するIMが存在する現在は、ネットワークによる連携で解決できます。それ故IM達には強くネットワークを薦めています。

さらに中長期観点で地域に新しい可能性の芽を育て、それらの芽を林や森にまで育てる特殊な能力です。それはあたかも縦糸に横糸を通すような活動で、それを実行するのがIMです。既存の士業でもコンサルタントでもコーディネータでもありません。これが現代日本型BI/IMです。

また、産業のユニットである個々の事業を作るのはIMでは無く起業家です。それ故IMの基本能力は起業家育成になりますが、この能力を涵養するのがJBIA-IM養成研修です。その要点はEntrepreneur Shipを体得させることに尽きます。経済、会計、知財、法律などは事業実施に必要ですが十分条件ではありません。

わが国の人口減少は顕著に進行しており、右肩上がりの発展が期待出来ないこれからは、地域経済の「持続」に重視し、直線活動的に行われた来た人材・事業の育成活動に先輩が後進を輩出する活動を加え、BIシステムの環状形成に注力します。

環状形成のため、既にIMが若者の起業教育に務めたり、女性起業家予備軍を育成する「SA制度」(スタートアップアテンダント)が始まっています。これらに加え、今後は先輩起業家がスタートアップし立ての人をサポートしたり、産業支援機関に対しIM志願者を増やす対策など、リングを強固にする仕組が望まれます。

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